2023/03/04 株式会社スノーピーク代表取締役会長兼社長執行役員 山井太先生 授業レポート

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株式会社スノーピーク代表取締役会長兼社長執行役員 山井太(とおる)先生 授業レポート

3月4日、2時間目の授業は株式会社スノーピーク代表取締役会長兼社長執行役員 山井太(とおる)先生でした。
山井先生は2000泊ものキャンプ泊をされており、『スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営』、『スノーピーク「楽しいまま!」成長を続ける経営』の著書があります。
今回は成長を続けるスノーピークと、山井先生のキャンプに対する思いを伺いました。

スノーピークとは

スノーピークは新潟県燕三条発のアウトドアブランドです。本社は15万坪のキャンプ場にあり、終業後にはオフィスの庭で焚火をして語り合い、ビールやハイボールを飲んでテント泊ができる、そんな環境が整えられています。山井先生いわく、
「800人ものキャンプ好きが集まっている会社です」。
ここはスノーピーカーの聖地・総本山となっています。

もともと燕三条は作業工具や大工道具などの加工技術が発達しているところでした。が、今では「燕三条」とネット検索すると多くのキャンプ用品メーカーが並び、スノーピークが地域に果たした役割の大きさを感じることができます。三条市のふるさと納税販売額も、2019年度は4億円だったものが2022年度には52億円(予定)に。そのうちスノーピーク製品やサービスは52%を占め、三条市は14億円の自由に使える財源を確保できるようになりました。

現在のスノーピークのコーポレートメッセージは「人生に、野遊びを。」

また、

「私達スノーピークは、

キャンプの力とデザインの力を使い、

衣食住働遊という人生価値を

スノーピークらしいやり方で創造します。」

とのメッセージを発信しています。

 

スノーピークが最も信じているもの

山井先生によると、キャンプとは「人間の根源的な営み」。家族や仲間とキャンプに行ってテントを張り、一緒に料理をして焚火を囲む……。個人と個人がしっかり向き合う時間を持つことで、よりお互いの絆が深まるとのこと。
年中お忙しい山井先生も、その埋め合わせをするためにご家族とキャンプに出て、焚火を見つめながらお互いの打ち明け話をすることもあったそうです。

「私達は、キャンプの価値を知っている。

キャンプは、個人の人間性を回復させる。

キャンプは、家族の絆を深める。

キャンプに行くと、隣のサイトの家族と友人になり、それが広がりコミュニティが形成される。

幸福なコミュニティの創出により地方創生が実現する。

幸福な地域が集まる良い国ができる。

地球が良い惑星になる。」

 

キャンプの力を使って衣食住働遊へ

そんなキャンプの力を信じている山井先生ですが、先進国の中でも日本はキャンプ人口が極端に少なく、全人口のわずか9%にしかすぎません。逆に言えばこれから91%の人にキャンプの良さをアピールすることができる、ということで、スノーピークでは実際に体験できる場を日常の「衣食住働遊」に持ち込むことを始めています。

例えば、「アパレルが人をキャンプに連れて行く」。スノーピークのスタイリッシュな服が実はキャンプ用品だった、ということがキャンプに興味を持つ入り口に。またキャンプフィールドで「テントでの会議」を体験することでその心地よさを体感し、個人的にキャンプを始めるきっかけとなることも。

「大切なのは体験できること。野に生きるための場、プラットフォームを提供し、スノーピークならではのコミュニティを形成する。コミュニティは未来を変える力となり、より良い決断ができる人が増えると未来は明るくなる」
そう山井先生は考えています。

 

地方創生

スノーピークは燕三条だけではなく、全国の地方創生に実績を上げています。山井先生が大切にしているのは、地域に対して持続可能であること、地元の雇用創生、新たな客層の掘り起こしにつながることの三つです。市長や町長など行政側の熱意も大事な要素の由、キャンプフィールドというプラットフォームからコミュニティを生んでゆく、オーダーメイドの地方創生を手がけているということです。

一例として挙がったのが、大分県日田(ひた)市。当初、市は補助金を使い、椿が鼻キャンプ場にウォータースライダーやゴーカート、コテージ等を作ったのですが、次第に何もかもが朽ちてしまい、「残念なキャンプ場」になり果てていました。山井先生はそれらをすべて壊すことを提案。壊すための補助金は出ないにも関わらず、市が5億円をかけ整備したところから九州初のスノーピークキャンプフィールドが生まれ、わずか一年で黒字化が実現したということです。

 

グランピングについて

授業ではスノーピークが手がけている、白馬村の「FIELD SUITE」の動画を見せていただきました。標高1200mからの絶景と気球体験、地元産のワインや食材を活かしたコース料理。ボートに乗っての湖上ランチは思わずため息が出るような美しさでした。クオリティを高く保つことやディテールの作り込みには日本人の良さを活かすことができる、と山井先生は考えています。そして、デザインの力とキャンプの力を集結してきちんとしたものを提供しないと、日本のグランピングはダメになってしまう、と、現状に危機感を持っておられるようでした。

 

山井先生の授業を終えて

今回の授業で一番心に残ったのは、「キャンプは人間性の回復につながる」との山井先生の言葉でした。ここ数年の「巣ごもり生活」を経験した私たちは、家族や友達と一緒に外に出て自然に触れることがどれほどの癒しになるか、身に沁みて感じることができます。キャンプは幸福なコミュニティを生み出し、それが拡大することで地球が良い惑星になる、という壮大な考え方にも共感することができました。

私事となりますが、私の父は山口県の田舎出身で、ほぼ「野生児」として育ったため、とにかくキャンプの好きな人でした。もう40年近く前のこと、今のようなキャンプギアはまだ存在せず、河原に着くとまず家族みんなで竃(かまど)に使えそうな手ごろな石を探して積むところから始めます。私にとってそれはとても楽しい作業でしたが、一番楽しそうだったのは父で、その時の非日常のきらきらと明るい風景はずっと記憶の隅に残っています。

山井先生率いるスノーピークはそんな「非日常」を「日常」に持ち込もうとされているとのこと。ある程度年齢を重ねた私たちにも、これから人生を歩もうとしている若い人たちにも、キャンプのある暮らしがごく普通のこととして広がってほしいと願います。質疑応答で伺った泉南の「スノーピーク大阪りんくう」をまずは私も訪ねてみたいと思います。

(授業レポート:ライター部 大北美年)

 

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