24/01/07 ITエヴァンジェリスト 若宮正子先生

「すでにはじまっている未来と日本の今」

目次

①     自己紹介

1-1 学生時代

昭和10年生まれ88歳の若宮先生。

物心がついた時から日本は戦争をしていて、疎開先での苦労なども経験されたそうです。

 戦争が終わり、中学校が新たにでき、そこに通うこととなった若宮先生。

敗戦後、海外の植民地から優秀な学者が日本に戻ってきて、教員不足のため中学校の先生を担うこととなったそうです。

カリキュラムも整っていない中学校で、優秀な先生がそれぞれ教えたいことを自由に教えてくれたことが、今の若宮先生の自由な発想につながっているとのことでした。

1-2 銀行員時代

高校を卒業し、銀行に就職。

当時は機械化が進んでおらず、手先が器用でない若宮先生はそろばんでの計算などに苦戦し、辛い思いをされていたそうです。

  時代が進むにつれ、機械化が進み、指先が器用でなくてもスムーズに業務が行えるよう になったことで、機械に助けられたとおっしゃっていました。

こうした経験もあり、若宮先生は機械やテクノロジーに対して親近感を感じているとのこと。

パソコンが手に入る時代になると真っ先にパソコンを購入し、今でいうSNSでさまざまな方とコミュニケーションを楽しまれていました。

1-3 親の介護を経て

銀行を定年退職後、お母さんの介護が始まりました。が、インターネットの普及により、ネット上の老人会メロウクラブを設立。介護をしながらもパソコンをひらけば、多くの方とお話をすることができ、生活の質を上げることができたのだそうです。

2010年にTedxTokyoに出た際、「私はインターネットから翼をもらった その翼は私をおばあちゃんの枕元という狭い世界から広い世界に連れ出してくれた」というタイトルでスピーチをしたところ、会場中から多くの共感を得られました。

 その後、スマートフォンが普及してきましたが、年配者向けのアプリがないことに疑問を持った若宮先生は、若い方の助けを得ながらアプリ「hinadan」を開発されました。

このアプリ開発が日本の新聞に掲載されると、アメリカのApple社CEOからの招待や国連の会議でのスピーチ、内閣官房の会議への有識者としての参加依頼など、多くのオファーが届くようになったそうです。

これら全ての会に対して、若宮先生は「面白そう」という好奇心のみで参加し、高齢者としての素朴な意見を述べておられるとのことです。

②     すでにはじまっている未来〜いわゆる「IT先進国」の実情〜

1-1    デンマーク

デンマークでは、官公庁や自治体で「紙を一切使わない」ことを決めたのだそうです。高齢者からの反発も強いかと思いきや国連の調査における幸せな国ランキングでは1位や2位に名を連ねています。

 デンマークでは、役所と住民の間での紙のやり取りを一切廃止する一方で、電子機器の操作を家族に頼れない人には、自治体や老人ホームの職員が手伝うこととなっており、老人ホームにもIT教育のボランティアが派遣されているのだそうです。

 もともとデンマークの国民性のひとつに「自立を尊ぶ」という考えがあります。

例えば、デンマークでは洗濯ができない人がいると、代わりに誰かが洗濯をするのではなく、その人が自分で洗濯できるよう洗濯機の造りそのものを変えるという発想があるのだそうです。

この国民性が、高齢者でも自分でIT機器を使いこなせることにつながり、「IT先進国」となったのだということでした。

1-2    エストニア

エストニアは、ロシアに近くに位置していることもあり、国防の面において、常に緊張感がある国なのだそうです。サイバー攻撃や思わぬ侵入に備えたレジリエンス(回復力・復旧力)の強化を図るため、国の重要データを友好国であるルクセンブルクに預けているのだそうです。

③     翻ってわが国は

日本はデジタル競争力ランキングで29位と、先進国の中でも下位にいるとのこと。

上に立つ人たちが高齢でデジタル化に積極的ではなく、政治家にとってもITが票につながらないことから、日本ではIT化の教育がまったく進んでおらず、人材が不足しています。

 また、年齢によるばらつきも大きく、70歳以上の世代では「必要があれば家族に頼ろう」と、デジタル機器を使う必要がないと考えている方も多いのだそうです。

今後、高齢化と情報化社会が進んでゆく中、このままでは若い世代にのみあらゆる負担がのしかかり、しんどくなってしまいます。

高齢者の心身の自立を促し、若者は高齢者の自立を支援する。

「やってあげる」のではなく、「できるようにしてあげる」ことが大事だと若宮先生はおっしゃっていました。

④     これからのAI時代に向けて

AIが身近な存在になり、簡単に使えるようになってきました。

しかし、まだまだ日本についての情報は少なく間違った答えを出すことも多いのが現状です。

だからと言ってAIを使わないのではなく、AIが出した答えを叩き台として、自分たちで考えて回答を作っていくことでAIが学習し、成長させることが可能となります。

 昨今、AIが人間に取って代わってしまうのでは?という論争が出ています。

AIは賢い。でも、人間がAIの奴隷になることはない。

AIには「体験」ができないので、火傷をすると痛いということはわかっていても、痛みそのものを知ることはできない。

AIはあくまで優秀な副操縦士であり、どのような存在になるのか、最終的には操縦士である人間次第。

 これからの時代、人手不足も相まって、“何か”は絶対に起こる。

その“何か”を乗り越えるためには柔軟な発想を大切にしてほしい。

AIには、ものを創造することはできないので、人間は創造的に生きてほしいと、若宮先生は話してくださいました。

⑤     最後に生徒へのメッセージ

授業の最後は先生からのメッセージで締めくくられました。

「こんな時代だからこそ、熱中小学校で、地域の課題を地域のみんなで学びつつ語り合い、「Best」ではないかもしれませんがBetter」な明日を見つけましょう。 変化の激しい時代こそ、新しいビジネスや新しい発想が生まれやすいと言われています。 地域を愛する志の高い仲間が待っています。こういう仲間と 交流し、話し合って新しいアイディアを生み、さらにそれを掘り下げて深め、発展させようではありませんか。

私は、現在|ITエヴァンジェリスト」として全国各地を 回っております。地域活性化対策には重要な「地域住民の方、 特に高齢の方のITリテラシーの向上」のお手伝いをするためです。 地域活性化などを語り合う時に、いつもの内輪の仲間ばかりですと行きづまってしまうことがあります。こういう時に は「よそもの、ばかもの、かわりもの」が加わると話が動き だす」といわれています。この三つを兼ね備えた私の話が少しでもお役に立てましたら幸いです」

 若宮先生、未来へつながるお話をどうもありがとうございました。

(授業レポート:大家 啓徳)

 

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