24/05/04 丹生都比売神社 宮司 丹生晃市 先生

世界遺産20周年を迎える「紀伊山地の霊場と参詣道」

 

丹生都比売神社は天野のシンボル。ここ、紀州かつらぎ熱中小学校の校歌にも登場します。

お恥ずかしながら、歴史に疎い私には知らないことばかりでした。丹生先生のお話をお聞きして、少し、少しだけ興味を持つことができたのでした(笑)

 

以下、授業の要約です。

 

大きく分けて、神社のこと&世界遺産のこと、の2つのお話でした。

 

目次

まずは丹生先生の自己紹介から

東京下北沢生まれ。親は神主ではなく経営者。宮司の家系の直系ではないそうです。

明治維新後、神社の宮司には陸軍の将校等が就く時代となり、そのあおりで直系「丹生」一族は絶えてしまったとのこと。

現在では丹生都比売神社は国の管轄下ではなく、宗教法人となっています。

 

丹生先生は國學院大學を卒業後、神社本庁へ。この時、丹生都比売神社には専任の宮司がおらず、兼任の宮司として着任したそうです。

 

当時、和歌山大学の学生が丹生都比売神社の認知度調査を行ったところ、認知度はわずか2割ほどしかありませんでしたが、2004年に世界遺産に登録されたことから認知度が上がり、参拝者も増えています。

 

日本の神道と仏教

アニミズムに起源を持つ神社の「神道」。世界では原住民が細々と残しているものですが、日本では、自分が神社の氏子だと認識している人だけで8600万人もいるそうです。一方、寺院の信者数は8500万人とほぼ同数で、神社とお寺の信者数が共にとても多い文化を持っています。

 

熊野大社は1000~2000年前に、また丹生都比売神社は1700年前に社殿が建立されたとのこと。

丹生都比売神社は、社殿が建つよりももっと前から山に神が宿っているとされており、聖地であるためその周辺に人は住めませんでした。宮司は三谷の丹生酒殿神社に住み、天野まで山の中を歩いて通っていたそうです。

 

仏教は、1500年前に伝来しました。

「黄金の仏像に手を合わせるといいことが起こる」

ということから、

「よいものは受け入れよう、輸入しよう」

と日本人は考え、神仏習合=融合して1300年も続きました。

これは、空海が中国から密教(人間だけでなくすべての生き物は成仏できる、という教え)を持ち帰った時から神仏融合(現在の多様性のもとになったのかも)が生まれ、神社と寺院が共存する時代が1300年もの長きに渡り続いたということです。

 

アニミズムと日本人

アニミズムとは、人間・動物・植物・天体など万物に霊魂が宿るという考え方。初めてこの考え方を使ったのがタイラーです。

アニミズムは原初的宗教の特徴で、宗教は未開のものから

「アニミズム→多神教→一神教」

と進化するのだと提唱しました。

その流れをたどるなら、アニミズムはまだ進化の途中であると捉えられます。

 

日本では「なんらかの宗教」を信じている人は約2割しかいませんが、「なんらかの特別な存在」を信じている人は半数以上います。日本にはアニミズムが浸透しており、西洋とはまた考え方が違います。

スサノオノミコトのように日本には悪いことをする神もおり、神が宿る自然にも善悪はありません。つまり、いいか悪いかではっきり分けることができないということで、物事を二元論では語れないのが日本です。

 

現在、日本は脱構造主義→ポスト構造主義の時代です。

 

世界遺産について

丹生都比売神社は2004年(平成16年)7月7日、世界遺産に登録されました。

世界遺産となっているところは「門番」のようなもので、今後もしっかり守ってゆくことを託されているのだそうです。

 

キーワードは「神と仏の共存(神仏融合)」。

社寺だけでなく、道、文化、歴史など、万物はみんなで守ってゆかなくてはなりません。

日本人は、

「誕生や初詣は神社(神道)、人生の終末は寺院(仏教)」

というように、神仏を身近にとらえて対立より融和を求め、新しい文化を築いてきました。

 

日本には25、世界には1000を超える世界遺産があります。

世界遺産に登録される、ということは、宗教を文化として認めること。そうすることでユネスコは平和に貢献していることになります。

 

写真の紹介

授業中、丹生先生は何枚かの写真を紹介してくださいました。→神道と仏教の融合

〇10月16日(神社の日)、神社の大伽藍にお寺の僧侶が集まり手を合わせみこしをかつぐ

 

〇「重要文化財 御社と山王院」の看板(レジメの4)

高野山総絵図・大伽藍(金剛峯寺蔵) 神社が大きく描かれる。 重要なものは大きく描かれる時代だった。

 

〇四季折々の姿が見られる神社。年4回は丹生都比売神社に参拝を♪今はバラも🌹

 

〇百日間の勤行を終えて護摩札を奉納するために神社へ。高野山の勤行を終えたら全員御礼参りに訪れることになっている(宗教が異なるのに)。

 

〇掛け軸:黒い犬、白い犬 狩場明神

 

おわりに

2024年7月7日、高野山大学で「世界遺産登録20周年記念フォーラム」が開催されます。テーマは「次世代に受け継ぐ世界遺産」。

ユネスコの元事務局長や、第一期紀州かつらぎ熱中小学校で授業をおこなってくださった神崎亮平先生(東京大学先端科学技術研究センターシニアリサーチフェロー)

などが登壇します。ぜひお申込みください!

丹生先生からは、

「子どもたちに伝えていくため、教育関係者にぜひ聞いてもらいたい。また、世界遺産は観光のためだけにあるのではないということを、観光関係者にも聞いてもらいたい」

とのことでした。

 

丹生先生、貴重なお話をどうもありがとうございました。

 

(授業レポート:永岡 加寿子)



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