2022/12/03 溝端紙工印刷 代表取締役社長 溝端繁樹 先生 授業レポート

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溝端紙工印刷 代表取締役社長 溝端繁樹 先生 授業レポート

12月3日、紀州かつらぎ熱中小学校 第三回目の授業の1時間目は、溝端紙工印刷 代表取締役社長、溝端繁樹 先生です。
溝端紙工印刷は明治40年創業、箸袋・紙ナフキン・紙おしぼり等、飲食店で使用される紙製品を主に製作しており、溝端先生はその五代目となります。
普段、何気なく使っている割りばしですが、発祥は奈良県吉野だとのこと。伐り出された吉野杉の端材(強度の高い樹木の外側)を利用して作られ、新品の割りばしを「おもてなしの心」と捉える風潮が生まれたことから、吉野の割りばしが全国に広がっていったそうです。
当時、溝端先生の会社は五條の割りばし屋とご縁があり、そこから箸袋の製作を始めたということでした。
現在では和歌山の他、北海道と熊本、福島にも工場があるそうです。

一人ずつに配っていただいた、溝端紙工印刷の製品

そんな溝端先生がこだわっておられること、それは日本の未来を見据えた会社経営です。海外に生産拠点を移す企業が増える中、産業の空洞化を危惧し、国内の工場に投資を続けています。
また、北海道の工場では赤字覚悟で割りばしの生産を始め、「伐採→植林→育林→50年単位の主伐」という日本の林業の基本を継承、伐りっぱなしで安価な中国製品に対抗しています。

溝端先生の未来を見据える目は、日本の人口減にも向いており、
「仕事の大切さはよく語られるが、出産の素晴らしさはほとんど語られていないのではないか」
と、危惧しています。
女性に対する出産の負担は大きく、仕事との両立は難しいため、
「今の時代、セクハラだと言われるかもしれませんが、女性にはできるだけ早い時期に出産していただき、その後、バリバリ働いて管理職まで上り詰めてもらいたいと考えています」
出産は先行投資であり、そもそも人が生まれなければモノは売れず、国そのものが成り立たないと溝端先生は憂慮します。子供を産みやすい税制の改革、子育て費用は社会が広く負担するという考えにまで話は及びました。

また、溝端紙工印刷には定年がないとのこと。現役世代が少なくなり社会保険料の負担が増えている現在、待遇はそのままに高齢者が仕事を続けてゆくことが、結果的には社会貢献となり、老後の生活の安定にもつながるのではと、溝端先生は考えています。

最後に溝端先生が触れたのは命の大切さについてでした。福島の原発を守った人たちのこと、新型コロナに対する医療従事者の働き等、命をかけた仕事をしてくれる人たちがいる一方で、愉快犯のように軽々しく命を奪う人間もいる現在の日本。自殺報道にしても「死んではいけない」ではなく「死んでも仕方がなかった」という、悲劇のヒーロー、ヒロイン扱いで報道されることが多く、それが逆に自殺を美化してしまうのではないかと、溝端先生は懸念しています。

そのようなさまざまなことから、溝端先生は教育の大切さを感じており、退任後の仁坂元県知事が立ち上げた「和歌山研究会」に参加されるとのこと。会社経営に留まらず、和歌山の先々を見通しての学びを深めてゆかれるとのことでした。

溝端先生の危惧している社会問題の中で、私がとても共感したのは少子化についてでした。今のままでは世の中の活気が失われ、じりじりとゆるやかに国が衰退してゆくのではとの危機感を持っています。
ただ、やはり女性にとって出産と仕事のバランスを考えるのは難しく、子育てを終えてからライター業にチャレンジを始めた私は、自分の社会経験の少なさをもどかしく思うことが多々あります。反面、子育てという「人間を育てる仕事」から得たものもたくさんあり、その利がもっと世の中に還元されるようになればとも感じています。

おそらく今後、生活様式はもっと多様化し、溝端先生が考えておられることも一つの大きな流れとなってゆくかもしれません。これまでの常識に従うのではなく、自分にとってどのような生き方が無理なく自然なのか、誰もが選べる日本であってほしいと願います。

(授業レポート:ライター部・大北美年)

 

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