24/01/07 和歌山大学教育学部附属小学校 中谷栄作先生

「ESDが示すこれからの学校の役割」

目次

①     工場の歯車教育

過去に事故や自殺で友人を失った経験から、子供達に自分の命を断つような子に育って欲しくないという思いで、中谷先生は小学校の教師になりました。

 教師になって1年目、子供達の自主性を重んじ過ぎたあまり、学級崩壊が起きてしまったそうです。

 今の学校現場は、教師が子供に何をするべきかを命令し、子供も先生からの命令を待っている状態。

工場の部品のように子供を扱い、子供達も部品であることを望んでいるように中谷先生は感じられたのだそうです。

 しかし、中谷先生は工場を壊してしまうタイプで、なかなか歯車が噛み合わず、周りの先生も子供達も中谷先生自身もしんどくなってしまっていたとのことでした。

 2年目に新天地に移ることとなり、自分のやり方をあきらめて工場型の先生になるかどうか迷った結果、やはり子供達の心を耕し育むために、心機一転、改めて工場を壊すことに挑戦していくと決めたのだそうです。

②     ペーパータワーから何を学ぶか?

まず4人1組になり、コピー用紙20枚だけで、テープや糊を使わずに10分間でどこまで高く積み上げられるかのゲームが始まりました。

 生徒全員が真剣に塔を積み上げ、最高で150cmの塔が出来上がりました。

 このペーパータワーの授業を行うにあたり、「チームワークを学ぶため」、「バランス感覚を養うため」のような目的設定をしてしまうと、1つのことしか学べなくなってしまいます。

中谷先生は、目的を示さずに面白いことをして、そこから子供がたくさんの学びを得る授業を大切にしているのだそうです。

敢えて目的を示さず、学びを得るための体験をする体験力を養っていきたいとのことでした。

こうした授業の中で、先生自身も子供達から学びを得ることが増えてきているそうです。

③     ESDとは??

ESDとは社会の課題と身近な暮らしを結びつけ、新たな価値観や行動を生み出すことを目指す学習や活動のことを指します。

 近年、話題に上がるSDGsは単に2030年までの目標を表すのに対し、ESDは持続可能な社会の担い手や創り手を育てることです。

 ものを販売する際に、この商品はSDGsのここに準じていると示すだけではなく、価値観を変えた上で、行動そのものを変えることがESDでは重要となってきます。

④     ESDの実践(あやの台小学校での学習)

中谷先生はESDとしてどのような授業をしてきたのかを紹介してくれました。

・課外授業で、生徒が道路のゴミに興味を持ったことから、ゴミ拾いを行う

・児童労働の授業の後、生徒達が育てた野菜を販売し、その売上で寄付を行う

生徒達はそれぞれの授業で、ゴミを拾うことよりゴミを捨てないことの大切さや、自分たちの行動で世界を変えることができる喜びを感じ、より深い学びを得たのだそうです。

 もともと子供達は学習した時に活動を起こしたくなるもの

その時に学校だからここまでしかしないというのではなく、

最後まで子供達に付き合うことが大事

活動の後に自分たちが学んだことを伝えることで、

自覚を育むこともでき、今後の行動が変わっていくのだそうです。

学校には出会いをデザインする力がある

授業には学びをストーリー化する力がある

子供にはつながりを受け入れられる力がある

生徒と先生がつながるだけでなく、

生徒と地域がつながることができる教育を目指していきたい。

ESDが日本の教育の基本となるように頑張っていきたい。

と決意を込め、中谷先生は力強い思いを語ってくださいました。

(授業レポート:大家 啓徳)

 

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